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握り締める淳司の拳が震えているのは、痙攣しているからではない。
「うん?そんな所に突っ立てないで、早くご飯にしたらどうだ?」
テーブルの椅子に座る父は、新聞から視線をずらして眼鏡を向ける。白米の香ばしい香りが、居間に充満している。納豆の少々粘り気の感じられる臭みはご愛嬌だ。
「今日はどうするの?」
質問の意味が、朝食をどうするのかと問われたと解釈した淳司は、
「納豆に目玉焼き、豆腐の味噌汁で」
「……納豆と目玉焼きはともかく、豆腐の味噌汁を今から作れと?」
簡潔な回答に母は、大仰に溜息を吐き出す。
「じゃあ、どうするだなんて聞かないほうがいいんじゃない?」
ソファに腰掛けテレビを見ている姉が、余計とも言える一言を言う。その一言余計に喋る癖は弟して何とかして欲しい。嫁の貰い手がいなくなるのでは、という懸念が現実と化さないように淳司は祈るばかりだ。
「味噌汁は昨日の余りものでいいから、納豆と目玉焼きお願い」
母は、『はいはい』と二つ返事をしながら、スリッパをパタパタと鳴らしながら台所に向かう。
「ふ〜む……今日の若い者は怖いな」
父がそう呟いたのはテレビに映し出された事件が原因だろう。
{十七歳の少年三人、ホームレスを撲殺!}
見出しのタイトルの文字がやけに大きく感じられる。
「そういう言い方、私は好きじゃないわよ、父さん」
父の物言いに姉が噛み付く。
我が家は男二人、女二人の為に、大概姉と母、父と俺、のタッグチームで議論が行われる。しかも性質の悪いことに、本人の意思は全く関係なく強制的に論争に参加させられるので、淳司としてはたまったものじゃない。
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